「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングの事業性に大きく関わる「架台」に起因したトラブルの事例にいて、具体的に解説します。
2020年度のFIT制度で低圧規模の全量売電対象としてソーラーシェアリングが残ったことで、改めて野立ての太陽光発電設備とのコスト差が注目されています。その中でも、最もコスト差が出る部分は「架台と施工費用」になるのですが、この部分を収益性など、変に発電事業寄りの視点のみで考えてしまうと、後々大きなトラブルに発展することがあります。
今回は、前回に引き続きソーラーシェアリングの架台設計について、これまでに私がコンサルティングの中で見てきたトラブル事例から対策を考えます。
前回の原稿では、ソーラーシェアリングの架台設計には、大きく藤棚式とアレイ式という2つのパターンがあることを解説しました。このどちらのパターンでも架台のトラブルは起きていますが、今回は営農面でトラブルが起きやすいものからまとめていきます。
営農面で最も多いトラブルは、遮光率がそもそも作物に適していなかったり、遮光率が高すぎて将来的な作物変更が難しかったりする場合が挙げられます。前回も述べたように作物の生育条件は光飽和点だけで決まるものではなく、それ以外の環境要因も複合的に考える必要があります。例えば、設備下の湿度や土中の水分量などは、やはり日射量に起因して変化します。
この部分を考慮した設計に失敗すると、作物がうまく育たなかったり、それによって作物転換を行ったりする際に、最終的には太陽光パネルを間引いて遮光率を低減させ、日射量を確保することが必要になります。そうなると発電設備全面での間引きが必要になりますから、発電量の低下を招き、売電事業側の収支計画に大きな影響が生じてしまいます。

高遮光率設計は将来的な作物転換が必要になった場合に問題となる
事業開始前の計画段階に取れる対策としては、当初から複数の作物生産を前提とした余裕のある遮光率の設定や、光飽和点以外の要素も加味した営農計画が重要です。
発電設備が直接的に作物に損害を与えてしまうものの一つが、太陽光パネルからの雨だれ被害です。下の写真のように畝(うね)がえぐられたり泥跳ねで作物の生育が阻害されたりといった被害が発生しますが、これは実際に営農を開始するまで気づかないことが多いです。

太陽光パネルからの雨だれで畝(うね)が浸食される様子
架台の横桟設計によって雨だれを軽減することは可能ですが、架台メーカーでそのノウハウを持っているところはほとんど無く、メーカー提案の架台設計で考慮されていることはまれです。そのため、問題が発生してから発電事業者側が追加コストを負担して対策を行うことになってしまいます。
計画段階で取れる対策としては、太陽光パネルを固定する架台横桟の設計によって雨水を適切に処理できるようにしたり、雨樋などを設置したりする方法などがあります。
農業用機械が効率的に使えない場合も、作物の生産性が低下したり、作物の転換が困難になったりします。これは架台の高さが不十分、斜材・筋交いが干渉して支柱近くまで耕作できない、支柱間隔が狭くてロータリーがけなどができないといった問題に起因します。事業開始後に架台の高さを上げたり、斜材・筋交いの設計を変えたりしようとすると、全面的な強度計算のやり直しが必要になり、結果的に設備の建て直しが必要というケースもあります。

農業機械の効率的な使用が困難な架台設計の例
計画段階で取れる対策としては、さまざまな農業機械による作業体系を検証しておき、汎用的な作業導入が可能となることを踏まえた設計にすることです。架台を簡易にして建設時に数千円~1万円/kW程度の架台コストを削減できたとしても、将来的な改修費用や農業生産の低下による事業廃止リスクの方がはるかに大きくなります。
今回まとめた3つのトラブルは、いずれも計画段階に工夫することで予防できます。初期投資を抑えたいがための設計や、単にソーラーシェアリングでの農業に対する知識が無いことで起きてしまうトラブルですが、事業が始まってからこれに対処しようとすると、削減できた初期投資以上の費用が掛かってしまいます。特にソーラーシェアリングの場合は、作物が育てられないと発電事業自体も破綻してしまいますので、トラブルを放置することはできません。
ソーラーシェアリングは長期にわたって太陽光発電と農業が共存していく取り組みであり、それによって農地が活用でき、今では野立てよりも総事業費ではローコストに導入することができます。無理なコストカットをするよりも、農業も含めたトータルでの収益が最大化できるような事業計画を考えていきましょう。