一般社団法人・ナチュラルキャピタルクレジットコンソーシアム(NCCC)は8月16日、民間が自主的に運営する「ボランタリーカーボンクレジット認証」第1号として、岡山県赤磐市のメガソーラー(大規模太陽光発電所)における草地化プロジェクト「岡山 赤磐草地プロジェクト」を認証したと発表した。
同プロジェクトは、岡山県赤磐市の「SF赤磐太陽光発電所」の敷地約50haを草地化することで炭素を固定化する取り組み。同発電所は、出力が約58MW、年間発電量が一般家庭約1万3000世帯分に相当する約65090万kWhの見込み。出光興産の子会社であるRSリニューアブルズが95%、JFEテクノスが5%を出資し、2021年4月に運転を開始した。
土壌有機炭素の蓄積による炭素除去量を算出し、自然由来の炭素除去(土壌炭素)に基づいて認証を行った。プロジェクト実施者および申請者は、辻田建機(大分県宇佐市)で、同社の特許技術「ユニティーグリーン工法」を用いた。認証期間は2021年11月25日~2028年11月16日。クレジット量は、認証予定量(申請者への割当分)が704t-CO2、バッファープール割当予定量が73t-CO2の合計777t-CO2の予定。
ボランタリーカーボンクレジットは、企業や個人が自主的に温室効果ガス排出削減・吸収した活動に対して発行するもの。クレジットを購入した企業・個人は、排出量を相殺(オフセット)する手段として利用できる。国や自治体が主導する環境証書(J-クレジット、グリーン電力証書、非化石証書)とは異なり国や自治体へのCO2排出量報告や国際イニシアチブ(RE100、CDP、SBTなど)といった公的な報告には利用できないが、民間の自主的な取り組みのため、行政による法令や規制が少なく、幅広い用途で自由に活用できるメリットがある。
世界で取引されるボランタリーカーボンクレジットには、持続可能な開発のための経済人会議(WBCSD)や国際排出量取引協会(IETA)などが策定した「VCS(Verified Carbon Standard)」、世界自然保護基金(WWF)などが設立した「GS(Gold Standard)」、米NPO法人Winrock International(ウィンロック・インターナショナル)が設立した「ACR(American Carbon Registry)」、米カリフォルニア州の団体が創設した「CAR(Climate Action Reserve)」などがある。
NCCCは、国内におけるボランタリーカーボンクレジット市場の活性化を目的に、環境省、国土交通省、農林水産省、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも意見交換しながら、2022年12月に設立された。現在は52企業と11自治体が参画、九州大学が後援する。NCCC認証ボランタリーカーボンクレジットは、ジャスミー(東京都港区)が運営するカーボンクレジット取引所「NCCX」で取引できるようになる。NCCXは8月にベータ版を開設し、9月下旬に正式に開設する予定。
今回の認証は、独自の認証規約「NCCCカーボンスタンダード」に基づくもので、海外に比べて成長が遅れている日本のボランタリーカーボンクレジット取引に新たなスタンダードを提示するという。また、こうした事業で創出されるクレジットは、脱炭素だけでなく、生態系保全や土壌の保全による土砂災害に対する防災減災効果など、自然に根ざした社会課題解決策として、複数の社会課題に対する効果(トレードオン)を期待できる高価値のクレジットになると説明している。