太陽光の余剰電力で水素製造、郡山市の施設で成果

清水建設と産業技術総合研究所(産総研)は、両者が共同開発した建物附帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」を郡山市総合地方卸売市場で実証運用し、CO2排出量を約53%削減できることを確認した。2021年12月28日に発表した。

 Hydro Q-BiCは、太陽光発電の余剰電力を利用して水素を製造・貯蔵し、必要時に電力に変換する水素エネルギー蓄電設備。水素の貯蔵に常温常圧で水素を吸蔵・放出できる独自の水素吸蔵合金を利用した。水素吸蔵合金は着火しても燃焼せず、非危険物として使用できるため、安全かつコンパクトに水素を貯蔵でき、一般施設にも容易に展開できる。

 郡山市の実証運用では、同市場の管理棟(床面積4310m2、電力需要最大100kW)にHydro Q-BiCを適用し、日常的な運用を通じてシステム導入に伴うCO2削減効果を定量評価した。2019年7月から2021年6月末まで2年間、連続運用した。

 導入システムは、合計出力64.5kWの太陽光パネル、製造能力5Nm3/hの水素製造装置、貯蔵量80Nm3の水素貯蔵装置、出力3.5kWの燃料電池4台、容量10kWhの蓄電池2台で構成される。清水建設が開発したビル・エネルギー管理システム(スマートBEMS)で一元的に管理・制御することでエネルギー利用を最適化した。

 6時~18時に太陽光発電の余剰電力(最大30kW)を利用して1時間に最大5Nm3の水素を製造・貯蔵。管理棟の電力使用ピーク時間帯である5時~9時に燃料電池と蓄電池から最大34kWの電力を太陽光発電に上乗せして供給し、ピーク電力を抑制した。その結果、電力由来のCO2排出量をシステム未導入時の想定値から約53%、太陽光発電のみ導入した場合と比べて約21%削減できることを確認した。

 また、オンサイトで製造した水素に加えて、外部から持ち込んだ水素の貯蔵・活用技術も実証した。加熱・冷却性能に優れた急速充填用タンクを新規開発し、産総研の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)で製造したCO2フリー水素の輸送・充填を試験し、定格100Nm3の水素充填を1時間程度で完了させることに成功した。持ち込み水素の蓄エネも可能になり、さらなるCO2削減を実現できる。

 Hydro Q-BiCは2021年5月、金沢市に竣工した清水建設北陸支店に実装されており、すでに実用化ステージに進んでいる。今後、メーカーなどとのアライアンスの拡充を通じて導入コストを削減し、適用案件の拡大を目指す。

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