ペロブスカイト太陽電池で変換効率29%、京大などタンデム型で

京都大学化学研究所の研究グループは、オックスフォード大学、分子科学研究所、理化学研究所らとの共同研究により、スズを含むSn-Pb(スズ・鉛)系ペロブスカイト半導体の界面構造制御法を開発し、これをボトムセル(下層の発電素子)に用いることでオールペロブスカイトのタンデム(多接合)型太陽電池の高性能化を実現した。12月24日に発表した。

スズと鉛を1対1で用いたSn-Pb型ペロブスカイト半導体は、1.25eVの狭バンドギャップを持ち、1050nm超の近赤外領域の光を光電変換できることから、ペロブスカイトのタンデム型太陽電池のボトムセルとして有望視される。しかし、スズを含む太陽電池は、Sn(II)からSn(IV)への酸化が生じやすく、結晶化ダイナミクスの制御が難しいことが課題だった。

 これまでは添加剤などでSn(II)の酸化を抑制したり、表面改質によって特性を向上させようとする研究が行われてきたが、前駆体溶液の化学的性質や結晶化プロセス、膜特性への影響に関する研究は限られていた。これに対し、京都大学の研究グループは、ペロブスカイト半導体薄膜の上下界面に電化の取り出しに有利なダイボール(双極子)を発現させる構造修飾を施すことで開放電圧を最大化する「ダイボール戦略」を提唱してきた。

 今回、独自の添加剤として、アンモニウム基とカルボン酸基を含む分子をSn-Pb系ペロブスカイト半導体の前駆体溶液に用いることで、高品質なSn-Pb系ペロブスカイト半導体膜が作製できる手法を開発した。ペロブスカイト半導体の構成イオンのうち、特にSn(II)が前駆体や添加剤との相互作用を支配し、カルボン酸基が溶液のコロイド特性と膜の結晶化を制御、アンモニウム基が膜の光電変換特性を改善することを見出した。

 特に2つの官能基を分子内に組み合わせた材料であるフェニルアラニンは、ペロブスカイト薄膜の半導体としての品質と均質性を改善し、個々の官能基を別々の分子で導入した場合の効果を上回った。このフェニルアラニンを添加剤に用いた単接合、2接合、3接合の各デバイスで、それぞれ光電変換効率23.9%、29.7%(上海マイクロシステム情報技術研究所より29.26%と認定)、28.7%の太陽電池が作製できた。それぞれの最高開放電圧は0.91V、2.22V、3.46Vに達した。

 また、より実用性の高い1cm2サイズの2接合および3接合デバイス光電変換効率28.4%(産業技術総合研究所において1cm2サイズの3接合セルで27.28%を認証)を得られた。さらに光学シミュレーション結果からは、現在の材料を用いて各セル膜厚などをさらに最適化することで、3接合セルで34.4%まで向上可能であることが示唆された。

 耐久性についても、封止した3接合セルは、大気下で860時間の光照射後も初期効率の80%を維持すること確認された。さらに、4接合型のオールペロブスカイトタンデムデバイスの作製にも成功し、開放電圧4.94V、光電変換効率27.9%を得られた。これは、接合数が4以上のオールペロブスカイトタンデム型太陽電池の作製が可能であることを実証した初めての報告になるという。

 今回の研究成果は、オールペロブスカイトの多接合型太陽電池のベンチマークとなるものであり、3接合および4接合のタンデムセルへの道筋を明確に示したという。今後、京都大学発のベンチャー企業であるエネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)にも技術移転し、高性能ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた研究開発を展開していく予定。

 

特別声明:本サイトは他の機関やウェブサイトから転載されたコンテンツを引用し、より多くの情報を伝達するためであり、利益を得るためではありません。同時に、その観点に賛成したり、その記述を確認したりすることを意味するものではありません。コンテンツは参考のためだけです。 著作権は原作者に帰属しますので、侵害があれば、当サイトに連絡して削除してください。