このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当している。
近年の夏は毎年のように猛暑と言われるが、2024年はその中でも稀にみる高温の日が続き、災害級の暑さとの表現も聞かれる。8月下旬に至っても、いまだに全国各地で35度を超える猛暑日が多い。文字通りの灼熱の夏が2カ月以上も継続している。
このような酷暑の中、エネテクがO&Mサービスを提供している全国各地の太陽光発電所では、連日のようにパワーコンディショナー(PCS)の故障や稼働停止が続いている。元々8月はPCSの故障や稼働停止への対応が多いなか(図1)、今年に至ってはまるでPCSが悲鳴を上げ続けているような状況という。
図1●月ごとのPCSの故障への対応数
(出所:エネテク)
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酷暑の中でPCSの故障や停止が増える理由として、まず夏季は日射量が多い上、1日当たりの日照時間も長いことから、PCSが連日フル稼働していることがある。
その中で、PCSという機器の特性として、直流から交流に電気を変換する際に熱の放出を伴う。このため、熱によるPCSへの負荷が過剰にかかりやすい状況にある。
そこで、規定値を超えると安全機能が働いて稼働を停止したり出力を抑えたりする機能が働くことが多くなる。これは発電量の減少を招く。さらに故障に至る場合も少なくない。
夏の高温期におけるPCSの故障でも、いわゆる分散型と呼ばれる小型の機種と集中型の大型機種では傾向が異なる。
分散型のPCSは、そもそもPCSの設置数が多い。太陽光発電所によっては、季節に関わらず常に一定数のPCSが故障しているような例も少なくない。
特に固定価格買取制度(FIT)の初期に開発された案件は、設置から10年程度の期間が経つ中で、経年劣化による故障も増えており、元々故障が頻発している案件も多い。それに加えて今年の酷暑の影響によって、相当数のPCSが故障したり、安全機能が働いて制御された運転を強いられたりしている。
遠隔監視システムを通じてエラーなどの警報が発される頻度も急増している。このエラーはPCSごとにしきい値を定められている場合、その値を超えると発される。
例えば、同じ容量のPCSを複数台設置している案件の場合、PCSごとの発電量の差が30%以上に広がるとエラーを発するような設定がなされている場合などである。
特定のPCSだけ温度が上がりやすい環境に設置されていたり、同じように高温にさらされる状況にあってもPCSの個体差による感度の違いが影響する場合もある。このような理由によって、特定のPCSだけ安全機能が働いて出力を抑えて運転している例も増えている。
集中型のPCSも、高温時の故障が増える傾向にある。屋外設置用の筐体(エンクロージャー)内に空調機が設置されているタイプのPCSは、空調機が正常に稼働している限り過熱による故障のリスクは少ない。
一方で、空調機を使わずに吸排気による空冷を採用している機種では過熱による故障といった例が続出するようになっている。
例えば、関東の太陽光発電所において、「重故障」による集中型PCSの稼働停止のエラーが発された。現地に駆け付けると、PCSの表示画面にも「重故障」のエラーメッセージが出ていた(図2)。
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図2●「重故障」のエラー表示